昔、私がまだ小学生の頃。
友人たちとの間に、こんな“暗黙のルール”がありました。
それは――
「好きな人ができたら、友人たちに報告をすること。」
お付き合いすることになったら、ではなく、
好きな人ができた時点で、つまり片思いの段階で報告するのです。
「あ、〇〇くん、素敵…好き」
と思ったら、即報告(笑)
今思えば、ガラスのハートを持つ少女たちにはなかなか過酷なルールでした。
とはいえ、恥ずかしさをこらえて報告したのに、
「気のせいだった」となると、再び「気のせいだった(*´-`)」と報告しなければならない。
だから、
「素敵だな → 好き」
のあいだには、ひとりで自分と向き合う時間が必要でした。
報告を受ける側の友人たちは、
どんな男の子であっても温かく受け止めてくれたし、
私も同じように、友人の報告を「へぇ、そうなんだ〜」と受け入れていました。
不思議なことに、
この「素敵→好き」をひとりで吟味している時はモヤモヤしていても、
報告した瞬間、気持ちが弾けてあふれてくるのです。
たとえその恋が実らなくても、
「受け入れてもらえた」という安心感がありました。
――つまり、「味方がいる」と感じられたのです。
だからこそ、みんな恥ずかしくてもそのルールを守っていたのだと思います。

今思い返してみると、
「好きな人ができた」と報告するあの瞬間の感覚は、
心理カウンセリングにとてもよく似ています。
クライエントが心の中の思いを、
カウンセラーという“安全な相手”に話すこと。
それがカウンセリングの始まりです。
目の前で温かく受け入れてもらえる感覚、
味方になってもらえる安心感、
話した瞬間に思いが弾けて、
自分の内面がどんどん見えてくる感覚――
これこそが、心理カウンセリングならではの体験です。
話さなければ、モヤモヤしたまま。
でも誰かに話すからこそ、
自分の気持ちがはっきりしていきます。
もちろん、問題解決を目指すこともカウンセリングの大切な目的ですが、
私はこの「思いを話すことで生まれる感覚」こそ、
カウンセリングの本質的な力だと感じています。
カウンセラーとして日々を過ごす今も、
私自身がカウンセリングを受けたり、仲間と語り合う中で、
思いがけない気づきや感情を味わうことがあります。
そしてそのたびに、
「自分を知ることって、なんて豊かなんだろう」
と感じています。
🕊️ この記事は、日本心理カウンセラー養成学院(JTC心理学院)の講師によって2016年に執筆された内容を再掲載したものです。
内容は当時の情報をもとにしていますが、今も心に響くテーマとしてお届けします。


